
はじめに
記事をご覧いただき、ありがとうございます。
AIセキュリティ合同会社の越川と申します。
私は10年以上にわたり、ウェブアプリケーション開発からサーバー構築まで幅広く経験し、現在はシステムの安定稼働、データ保護、サイバー脅威対策といった分野に注力しています。そのような経験から、現代のビジネス環境におけるデータの重要性と、それを保護する必要性を日々痛感しております。
そして、このデータ保護と脅威対策を統合的に実現する上で、今や欠かせない存在となっているのが、本稿のテーマである「次世代ファイアウォール」です。
現代のビジネス環境において、サイバー攻撃の脅威は日々増大しています。
特に中小企業では、限られたリソースの中でも効果的なセキュリティ対策が求められています。従来のポートベースのファイアウォールでは対応しきれない高度な脅威に対し、次世代ファイアウォール(NGFW)の導入が不可欠となっています。
本記事では、Fortinet社が提供するFortiGate 60シリーズについて、セキュリティエンジニアの視点から詳しく解説します。導入を検討されている情報システム部門の担当者様に向けて、実践的な導入ステップから活用事例まで、包括的な情報を提供いたします。
ネットワークにおいて、スイッチのポート単位でネットワークへのアクセスを制御する方式のことです。
従来のファイアウォールで、TCP/UDPポート番号のみを基準とした通信制御方式です。
具体的には、ポートベース認証やポートベースVLANなどが挙げられます。
従来のファイアウォール機能を拡張し、アプリケーションレベルでの制御や侵入防御システム(IPS)、脅威インテリジェンスなどの高度なセキュリティ機能を統合したセキュリティ製品です。
従来のファイアウォールがポート番号やIPアドレスなどの基本的な情報で通信の可否を判断するのに対し、NGFWはアプリケーションの内容や振る舞いを解析し、より詳細な制御を行うことで、高度な脅威からネットワークを保護します。
FortiGate 60とはなにか
概要と位置づけ
FortiGate 60は、Fortinet社が展開する次世代ファイアウォール製品群の中で、中小規模オフィスや分散拠点、リモートオフィス向けに最適化されたエントリーレベルの機種です。
FortiGate次世代ファイアウォールは、専用のセキュリティプロセッサとFortiGuard Labsの脅威インテリジェンスセキュリティサービスを活用することで、暗号化されたトラフィックにおいてもトップクラスの性能を実現しています。
技術的特徴
FortiGate 60の最大の特徴は、Fortinet独自のSoC(System-on-a-Chip)を搭載している点です。
この専用チップにより、高スループットを実現しながら低遅延を保つことができます。
また、FortiOSという統合セキュリティオペレーティングシステムにより、以下の機能を一元管理できます。
- ファイアウォール機能
- VPN(Virtual Private Network)
- アンチウイルス機能
- Webフィルタリング
- IDS/IPS(侵入検知・防御システム)
- アプリケーション制御
対象となる企業規模
FortiGate 60は、従業員数50~200名程度の中小企業に最適な性能を提供します。
スループット性能やセッション数の仕様により、過不足のない適切なセキュリティ環境を構築できます。
システムに必要な複数の機能を1つのチップに集積した集積回路のことです。
CPU、メモリ、GPU、通信モジュールなど、従来は複数のチップに分かれていた部品を1つのチップにまとめることで、小型化、低消費電力化、高性能化を実現します。
SoCは、スマートフォンやタブレット、IoTデバイスなど、小型で高性能が求められる機器に広く採用されています。
Fortinet社が開発したセキュリティに特化したオペレーティングシステムであり、同社のセキュリティファブリックの基盤となるものです。
FortiOSは、ネットワークセキュリティ、SD-WAN、スイッチング、ワイヤレスアクセス、ネットワークアクセス制御(NAC)、認証、クラウドセキュリティ、エンドポイントセキュリティ、脅威防御など、幅広い機能を統合し、一元的な管理と可視性を提供します。
インターネット上に仮想的な専用線を構築し、安全にデータを送受信するための技術です。
VPNを利用することで、公共のインターネット回線でも、まるで専用線のように安全に通信できるようになります。
どちらもネットワークやシステムを不正アクセスから守るためのセキュリティシステムです。
IDSは不正な通信を検知して管理者へ通知する役割を担い、IPSは不正な通信を検知して遮断する役割を担います。
なぜFortiGate 60が活用されるのか
脅威の多様化と暗号化への対応
現代のサイバー攻撃は、エンタープライズ環境のトラフィックの80%が2019年までに暗号化されるようになり、企業を標的にする攻撃の50%が暗号化されたトラフィックによって隠蔽されるようになると予測されています。
FortiGate 60は、SSLインスペクション機能により、暗号化されたHTTPS通信の内容も検査することができます。
統合管理による運用効率化
従来のセキュリティ対策では、複数のベンダーの製品を組み合わせる必要がありましたが、FortiGate 60では単一のプラットフォームで包括的なセキュリティ機能を提供します。
これにより、管理工数の削減と運用コストの最適化が実現できます。
脅威インテリジェンスの活用
FortiGuard Labsによる24時間365日の脅威インテリジェンス収集により、最新の攻撃パターンや悪意のあるIPアドレス、ドメイン情報が自動的に配信されます。
これにより、未知の脅威に対しても迅速な対応が可能となります。
SSL/TLSで暗号化された通信を復号化し、セキュリティ検査を行う機能のことです。
これにより、暗号化された通信に隠れたマルウェアや不正なWebコンテンツを検出し、セキュリティを向上させることができます。
フォーティネットのサイバーセキュリティ脅威インテリジェンス研究部門です。
世界中の脅威状況を24時間365日監視・分析・研究し、その成果を基に、最新の脅威情報やセキュリティサービスを提供しています。
FortiGate 60の具体的な導入ステップ
1. 現状分析と要件定義
導入前に、現在のネットワーク構成とセキュリティ要件を詳細に分析します。
主に、以下の項目を確認します。
ネットワーク構成の調査
- 現在の回線速度とトラフィック量
- 既存のネットワーク機器との接続方法
- 外部拠点との接続要件
セキュリティ要件の明確化
- 対象となるユーザー数とデバイス数
- 必要なセキュリティ機能の選定
- コンプライアンス要件の確認
2. 機種選定とライセンス設計
FortiGate 60シリーズには、60E、60F等の複数モデルがあります。
各機種の性能差を理解し、適切な選択を行います。
また、サブスクリプションライセンスの選定も重要です。
主要ライセンス種別
- FortiCare:ハードウェア保守とファームウェアアップデート
- UTM Bundle:包括的なセキュリティ機能パック
- Enterprise Bundle:高度な脅威対策機能
3. 物理的設置と初期設定
物理設置
- 適切な電源確保と冷却環境の準備
- ネットワークケーブルの接続
- 管理コンソールの接続
初期設定作業
- 基本的なIPアドレス設定
- 管理者アカウントの設定
- ファームウェアの最新化
4. セキュリティポリシーの設定
ファイアウォールポリシー
- 送信元・宛先・サービス・アクションの定義
- ユーザーグループ別のアクセス制御
- 時間帯制限の設定
アプリケーション制御
- 業務利用アプリケーションの識別
- 禁止アプリケーションの設定
- 帯域制限の実装
5. 運用・監視体制の構築
ログ設定
- FortiAnalyzerとの連携設定
- 重要イベントのアラート設定
- 定期レポートの自動生成
保守・運用プロセス
- 定期的なファームウェア更新計画
- 設定変更の承認フロー
- 障害時の対応手順
ソフトウェアやサービスを一定期間利用する権利に対して料金を支払うライセンス形態です。
所有権を購入するのではなく、契約期間中は利用できる権利を得るという形式で、月額または年額の料金を支払うのが一般的です。
Fortinet社が提供する、セキュリティログの一元管理と分析を行うためのアプライアンス製品です。
ネットワークに接続されたFortiGateなどのログを収集・分析し、脅威の可視化やレポート作成を支援します。
これにより、セキュリティインシデントへの迅速な対応や、セキュリティポリシーの評価・調整を効率的に行うことができます。
FortiGate 60のメリット
性能面でのメリット
高スループット性能
FortiGate 60は、専用のセキュリティプロセッサにより、セキュリティ機能を有効にした状態でも高いスループットを実現します。一般的な中小企業の回線速度(100Mbps~1Gbps)に対して十分な性能を提供します。
低遅延処理
ハードウェア処理によるパケット検査により、従来のソフトウェアベースのファイアウォールと比較して大幅な遅延削減を実現しています。
管理面でのメリット
直感的な管理インターフェース
WebベースのGUI管理画面は、セキュリティ専門知識が少ない担当者でも操作しやすい設計となっています。
ウィザード形式の設定支援により、複雑な設定も段階的に実施できます。
一元管理による効率化
複数のセキュリティ機能を単一のプラットフォームで管理できるため、運用工数の削減と管理コストの最適化が可能です。
他製品との比較表
項目 | FortiGate 60 | SonicWall TZ | Sophos XG |
---|---|---|---|
価格帯 | 中程度 | 低価格 | 高価格 |
性能 | 専用チップで高性能 | 標準的 | 高性能 |
管理性 | 直感的GUI | 複雑な設定 | 高度な機能 |
統合機能 | 包括的 | 基本的 | 包括的 |
脅威インテリジェンス | FortiGuard Labs | SonicWall Capture | Sophos Labs |
導入実績 | 高い | 中程度 | 高い |
技術サポート | 24時間365日 | 営業時間内 | 24時間365日 |
スケーラビリティ | 高い | 限定的 | 高い |
セキュリティアーキテクチャのイメージ

図の説明
この図は、FortiGate 60を中心としたセキュリティアーキテクチャを示しています。
インターネットからの脅威を多層防御により検知・防御し、部門別に分離された内部ネットワークを保護します。
また、SSL-VPNによるリモートアクセスとIPSec VPNによる拠点間接続も安全に実現できます。
活用方法
ここでは、実際にあり得るシナリオを紹介いたします。
シナリオ1.中小企業のリモートワーク環境構築
コロナ禍のためテレワーク環境が必須となり、セキュリティ面の不安がありましたが、FortiGateを導入することにより解決しました。
ある中小企業では、従業員50名のリモートワーク環境を構築するために、FortiGate 60を活用してSSL-VPN接続を実現しました。
導入効果
- 社外からの安全なアクセス環境の実現
- 従業員の生産性向上
- セキュリティリスクの最小化
シナリオ2.複数拠点の統合セキュリティ管理
製造業の企業では、本社と3つの営業所にFortiGate 60を配置し、IPSecVPNにより拠点間を接続しています。FortiManagerによる中央管理により、全拠点のセキュリティポリシーを統一管理しています。
実現された効果
- 一元的なセキュリティポリシー管理
- 運用コストの削減
- セキュリティレベルの標準化
シナリオ3.教育機関での活用
お客様用と従業員用のインターネット回線を分離し、従業員用ネットワークがダウンした際にはお客様用ネットワークを利用してインターネットへ接続できるようにしました。
このような冗長化構成により、業務継続性を確保しています。
参考文献
- フォーティネット導入事例:https://www.fgshop.jp/product/case/
- ATC構築サービス:https://www.atc.jp/fortigate-60f-price/
インターネット上で安全な通信を実現するためのVPN接続方式の一つです。
IPsec (Internet Protocol Security)というプロトコルスイートを用いて、データの暗号化、認証、トンネリングを行い、盗聴や改ざんのリスクを軽減します。
特に、拠点間のネットワークを安全に接続するのに適しており、企業などが安全にデータをやり取りするために利用されます。
Fortinet社が提供するネットワークセキュリティ製品の一元管理プラットフォームです。
複数のFortiGateや他のFortinet製品を集中管理し、設定、監視、保守を効率化できます。
まとめ
FortiGate 60は、中小企業のセキュリティ強化に最適な次世代ファイアウォールです。
独自のSoC技術による高性能、統合されたセキュリティ機能、直感的な管理性により、限られたリソースの中でも効果的なセキュリティ対策を実現できます。
導入を成功させるためには、現状分析から始まり、適切な機種選定、段階的な設定、そして継続的な運用体制の構築が重要です。FortiGuard Labsによる最新の脅威インテリジェンスと、24時間365日のサポート体制により、長期的に安心してご利用いただけます。
セキュリティの重要性がますます高まる中、FortiGate 60は中小企業のデジタルトランスフォーメーションを支える重要な基盤として、多くの企業に選ばれています。
参考文献
- フォーティネット公式サイト – FortiGate製品情報:
https://www.fortinet.com/jp/products/next-generation-firewall
- FortiGate導入事例 – FGショップ:
https://www.fgshop.jp/product/case/
- ATC構築サービス – FortiGate 60F価格情報:
https://www.atc.jp/fortigate-60f-price/
- セカンドラボ – ファイアウォール製品比較:
https://2ndlabo.com/article/591/
- E Security Planet – Sophos XG vs Fortinet FortiGate比較:
https://www.esecurityplanet.com/products/sophos-xg-vs-fortinet-fortigate/
- Gartner Peer Insights – Fortinet vs Sophos比較:
https://www.gartner.com/reviews/market/network-firewalls/compare/fortinet-vs-sophos
- フォーティネット – 企業導入事例:
https://www.fortinet.com/jp/customers