「IBM QRadar(キューレーダー)」について

目次

はじめに

情報セキュリティの脅威が多様化・高度化する現代において、企業のセキュリティ体制を強固にするためには、リアルタイムでの異常検知と迅速な対応が不可欠です。本記事では、SIEM(Security Information and Event Management)製品の代表格である「IBM QRadar(キューレーダー)」に焦点を当て、その機能や導入メリット、運用ポイントなどを詳しく解説します。情報システム部門やセキュリティエンジニアの皆様が、製品選定の際に知りたい情報をまとめてご紹介しますので、ぜひご一読ください。

IBM QRadarの概要

SIEM製品としての立ち位置

IBM QRadarは、ログ管理、ネットワーク通信の可視化、脅威インテリジェンスとの連携などを一元的に実現するSIEMプラットフォームです。2004年に米Q1 Labs社が開発し、その後IBM傘下で製品強化とクラウド対応を進めてきました。

主な機能とアーキテクチャ

QRadarは、各種デバイスやアプリケーションから送られるログを収集・正規化し、相関分析エンジンで異常パターンを抽出します。収集データは、フローキャプチャエンジンでネットワークトラフィック情報と組み合わせ、リアルタイムな可視化と自動検知を可能にします。オンプレミスとクラウドのハイブリッド運用に対応しており、スケールアウト構成で大規模環境にも柔軟に適応します。

IBM QRadar導入のメリット

高度な脅威検知

QRadarは、既知の攻撃シグネチャだけでなく、ユーザビヘイビアアナリシス(UBA)を活用し、通常と異なる振る舞いを検出します。このため、ゼロデイ攻撃や内部不正など、未知の脅威にも早期に対応することが可能です。

運用効率の向上

直感的なダッシュボードとレポート機能により、セキュリティアラートの優先順位付けが容易になります。また、自動チューニング機能で誤検知を抑制し、運用負荷を軽減。日々の定例レポート作成や監査対応にも活用できる豊富なテンプレートが用意されており、人的工数の削減に貢献します。

柔軟な拡張性とエコシステム

IBMクラウドとのシームレスな連携や、各種サードパーティ製品とのインテグレーションが充実しているため、既存のネットワーク防御やEDR製品と組み合わせた多層防御を構築できます。また、App Exchangeからセキュリティ解析アプリケーションを追加し、独自のニーズに応じた機能拡張が可能です。

運用・構築時のポイント

初期設計時の留意点

導入前にログソースの範囲や保持ポリシーを明確化し、必要な容量を試算することが重要です。特に金融業や医療機関など、規制対応が求められる業種では、ログ保持期間やアクセス制御の要件を踏まえたアーキテクチャ設計が求められます。

チューニングとアラート設定

効果的な異常検知には、固有の業務フローに合わせたチューニングが欠かせません。導入当初はデフォルトルールで様子を見つつ、誤検知や不要な通知を減らすためのルール追加・修正を段階的に行いましょう。

運用体制の整備

セキュリティ運用センター(SOC)との連携や、インシデント発生時の対応フローを定義することで、迅速な対応が可能になります。定期的な訓練や演習を通じて、担当者のスキルアップとチームワークの強化を図ることをおすすめします。

導入事例と活用シナリオ

金融機関でのリスク可視化

国内大手銀行では、QRadarを活用して内部取引システムの振る舞いを分析。従来は検知が難しかった異常トランザクションを早期に発見し、不正送金の未然防止に成功しています。

製造業におけるOTネットワーク監視

製造ラインの制御装置とITシステムを統合監視。ネットワークトラフィックの異常をリアルタイムに通知し、ライン停止リスクの低減に貢献しています。

クラウド環境の統合管理

複数クラウドサービスのログをQRadar on Cloudで一元管理。ガバナンス強化とコスト最適化を両立し、セキュリティ体制のクラウドシフトを加速させています。

まとめと今後の展望

IBM QRadarは、包括的な脅威検知機能と高い運用効率を両立したSIEMプラットフォームです。導入前の要件定義から運用体制の整備まで一貫してサポートすることで、企業のセキュリティレベルを飛躍的に向上させることが可能です。今後はAIを活用した自動応答や、より広範なIoTデバイス対応など、さらなる機能拡張が期待されます。

QRadarの導入検討を進める際は、まずはPoC(概念実証)を実施し、自社環境における効果を確認することをおすすめします。その上で本番環境へ移行し、継続的な運用改善を図ってください。

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