【2025年最新版】Tenable Nessus完全ガイド|導入から使い方、レポート活用、自動化まで徹底解説

目次

はじめに

サイバー攻撃の脅威が日々深刻化する現代において、企業や組織のIT資産を保護することは最重要課題の一つです。

システムやネットワークに潜む脆弱性は、攻撃者にとって格好の侵入口となり、ひとたび狙われれば甚大な被害につながりかねません。

こうしたリスクを未然に防ぐためには、自社の環境にどのような脆弱性が存在するかを正確に把握し、迅速に対処する「脆弱性管理」のプロセスが不可欠です。

その脆弱性管理の中核を担うのが、脆弱性診断ツールです。数あるツールの中でも、世界中でデファクトスタンダードとして広く認知されているのが、Tenable社が提供する「Nessus」です。

本記事では、このNessusについて、基本的な概要から導入、具体的な操作方法、さらには応用的な活用術や運用上のベストプラクティスに至るまで、網羅的に解説します。

Nessusの導入を検討している方から、すでに利用しているがさらに活用を深めたい方まで、幅広い読者にとって有益な情報となることを目指します。

Tenable Nessusとは何か?

脆弱性診断の重要性とNessusの位置づけ

現代の企業IT環境は、かつてないほど多様かつ複雑になっており、業務を支えるシステムの中には、知らず知らずのうちに脆弱性を抱えたまま運用されていることも珍しくありません。

こうしたリスクに早期に気づき、適切な対処を行うためには、定期的な脆弱性診断が欠かせません。

その中でもTenable社が提供するNessusは、世界的に広く使われている脆弱性スキャナーの1つです。

Nessusの主な特徴と利点

Nessusは、ネットワーク上の端末やサービスに潜む脆弱性を検出し、詳細なレポートを生成することで、情報セキュリティ担当者にとって強力な支援ツールとなります。

OSSの流れを汲みつつ、商用化によってインターフェースや機能性が飛躍的に向上したNessusは、企業のセキュリティ運用体制において標準的な位置づけを確立しています。

Tenable Nessusの特筆すべきポイントは、その高精度な検出力に加え、使いやすさと柔軟性の両立にあります。

多くの脆弱性スキャナーは操作や設定が複雑で、専門知識が必要とされることが多い中、Nessusは直感的なGUIを備え、導入初期からスムーズに運用が可能です。

セキュリティエンジニアや情報システム部門の担当者がNessusを導入することで得られる利点は以下の通りです。

まず、社内システムの脆弱性状況を定量的に把握でき、経営層に対する説明資料やコンプライアンス対応に活用できます。

また、スキャン対象のネットワーク範囲やポリシーを細かく指定できるため、自社のインフラに即したカスタマイズが可能です。

さらに、CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)に準拠したレポートにより、ベンダーとのパッチ適用交渉にも説得力が増します。

Nessusは単なる検出ツールではなく、セキュリティ運用の要とも言える存在であり、企業にとって不可欠なソリューションの一つなのです。

Nessusの導入準備—環境要件とインストール方法

対応プラットフォームとシステム要件

Nessusを運用環境に導入するにあたり、まずは対応OSやシステム要件を確認する必要があります。

TenableはLinux(CentOS、Ubuntu、Debianなど)、Windows Server、macOSといった主要プラットフォームに対応しており、導入先のOSに合わせたインストーラーを公式サイトからダウンロードすることができます。

インストールに際して重要なのは、Nessusの稼働に必要なハードウェア要件を満たしているかどうかです。

小規模なスキャンであれば最低限のスペックでも十分ですが、大規模なネットワークや複数のスキャンを並列で行うようなケースでは、CPUやメモリのリソースが鍵となります。

実際の運用では、最低でも2コアCPUと4GB以上のRAMが推奨されていますが、理想としては8GB以上のRAMを備えた環境が望ましいでしょう。

インストールと初期セットアップ

インストーラーを実行すると、Nessusサービスが自動的にバックグラウンドで起動され、Webインターフェースを通じたセットアップが案内されます。通常はポート8834でWeb GUIにアクセスし、初期設定を行います。

初回のセットアップではアクティベーションコードの入力を求められますが、Tenableの公式サイトで無料トライアルライセンスを取得することも可能です。

また、初回のスキャンを行う前には、脆弱性定義ファイル(プラグイン)のアップデートが実行されます。

これはNessusの検出精度に直結する重要なプロセスであり、社内のプロキシ環境などで通信制限がある場合は適切な例外設定が必要となるため注意が必要です。

インストールと初期設定が完了すれば、いよいよ本格的なスキャンの準備が整ったことになります。

基本操作とスキャンの実行方法と脆弱性診断

スキャンの新規作成とテンプレート選択

Nessusのセットアップが完了したら、いよいよスキャンの作成と実行に入ります。

まず、NessusのWebインターフェースにアクセスし、ダッシュボードから「New Scan」を選択します。

ここではスキャンテンプレートを選ぶことになりますが、最も基本的なものとしては「Basic Network Scan」があります。

このテンプレートは、一般的なTCP/UDPポートスキャンと脆弱性検査を行うもので、最初のスキャンとしては適しています。

ターゲット設定とスケジュール実行

スキャンの作成画面では、スキャン名や説明、ターゲットのIPアドレスやホスト名を入力します。

複数のターゲットを同時に指定することも可能で、CSV形式でインポートすることもできます。

また、スケジュール設定をすることで、スキャンを定期的に自動実行させることができます。

これは定期的なセキュリティチェックに非常に有効であり、特にセキュリティポリシーに基づいた運用に適しています。

認証スキャンの重要性

スキャンポリシーの設定では、認証スキャン(Credentialed Scan)の有無を決めることが重要です。

認証スキャンを有効にすることで、OS内部の詳細な情報や設定ミス、パッチ未適用状態などを検出することが可能になります。

Windows環境ではドメインアカウントや管理者アカウントを、Linux環境ではSSHキーやパスワードによる認証情報を用意する必要があります。

スキャンの実行と完了確認

スキャンの設定が完了したら、「Save」ボタンを押して設定を保存し、手動で「Launch」するかスケジュールに従って実行されるのを待ちます。

スキャン中はリアルタイムで進捗状況を確認でき、ステータスバーには対象ホストごとの処理状況が表示されます。

スキャンが完了すると、「Completed」と表示され、結果の確認が可能になります。

スキャン結果には、検出された脆弱性の一覧、リスクレベル(Critical、High、Medium、Low、Infoなど)、影響を受けるサービスやポート番号、そしてそれぞれに対する推奨対策が記載されています。

スキャン結果の見方とレポート活用—実務に役立てるには?

脆弱性の深刻度(Severity)の理解

Nessusによるスキャンが完了した後、ユーザーが最初に行うべき作業は、レポートの詳細を正しく読み取り、組織にとって意味のある形で情報を解釈することです。

単に「脆弱性が検出された」と知るだけでは十分ではなく、その内容の深掘りと優先度付けが極めて重要です。

Nessusのスキャン結果は、Webインターフェース上でホストごとに確認することができます。

検出された脆弱性には、それぞれ「Critical」「High」「Medium」「Low」「Info」などの深刻度(Severity)が自動的に割り当てられています。

これらのレベルは、CVSS(Common Vulnerability Scoring System)に基づいて算出されており、業界標準に準拠したリスク評価がなされています。

優先順位付けと関係部署との連携

特に「Critical」や「High」と判断された項目は、即座に対応が必要なケースが多いため、インフラ運用チームやシステム開発部門と連携し、早急な対処を行う必要があります。

そのためには、スキャン結果をそのまま共有するだけでなく、影響範囲や予想されるインシデントの内容、対策実施にかかる工数などをあわせて説明できるように整理すると効果的です。

レポートの詳細情報と修正への活用

レポートには、各脆弱性の技術的な詳細や発見された根拠、Tenable社が推奨する修正方法が記載されています。

たとえば、「OpenSSLの旧バージョンを使用しているためにDoS攻撃の危険がある」といった記述には、バージョン情報や関連CVE、参考URLなども含まれています。

これらの情報は、実際に修正を担当するエンジニアにとって非常に有用であり、作業の迅速化につながります。

レポートのエクスポートとカスタマイズ

また、Nessusにはレポートのエクスポート機能も備わっており、PDFやCSV、HTMLといった形式で保存・共有が可能です。

レポートテンプレートはカスタマイズできるため、経営層向けの概要報告と、技術担当向けの詳細報告を分けて作成することもできます。

これにより、組織内の情報伝達が円滑になり、脆弱性管理プロセスが一段と強化されます。

継続的な改善とPDCAサイクル

さらに、Nessusは過去のスキャン結果と比較する機能も持っており、改善の進捗をトラッキングすることができます。

これにより、継続的なセキュリティ対策のPDCAサイクルを回しやすくなり、対策の優先順位付けやパフォーマンス評価に役立ちます。

応用的な活用方法—自動化と外部ツール連携による効率化

スケジュール機能による定期的な自動スキャン

Tenable Nessusを効果的に活用するためには、単発のスキャンだけでなく、定期的かつ自動化されたスキャン運用や、他のセキュリティソリューションとの連携を図ることが重要です。

まず、自動化における基本的な機能としては、スケジュールスキャンの設定があります。

これは、特定の曜日や時間帯に定期的にスキャンを行う機能であり、セキュリティ監査や運用ルールに基づいたチェック体制の構築に役立ちます。

たとえば、毎週日曜深夜に本番環境をスキャンし、月曜朝にレポートを確認することで、週次のリスク管理体制が自然と形成されます。

RESTful APIによる自動化とDevSecOpsへの応用

さらに、NessusはAPIを用いた操作が可能であり、RESTful APIによりスキャンの作成、実行、結果取得、レポート出力などが外部システムから制御できます。

この機能を活用することで、CI/CDパイプラインの一部としてスキャンを組み込み、自動ビルド後の脆弱性チェックを実施することが可能になります。

開発とセキュリティの融合、いわゆるDevSecOpsの実現に向けた大きな一歩です。

SIEM/SOARとの連携による高度なリスク分析

加えて、SIEM(Security Information and Event Management)やSOAR(Security Orchestration, Automation and Response)との連携も現実的です。

たとえば、SplunkやQRadarといったSIEM製品と連携すれば、Nessusのスキャン結果を他のセキュリティイベントと突き合わせて、より高精度なリスク分析が可能になります。

また、SOARとの連携により、スキャン結果に基づく自動対処フロー(例:特定の脆弱性検出時にファイアウォール設定を変更するなど)も構築可能です。

上位プラットフォームとの連携による集中管理

そして、Tenable.ioやTenable.scといった上位プラットフォームと連携することで、複数のNessusインスタンスを集中管理し、企業全体のセキュリティ可視化を実現することもできます。

これは特に拠点数の多い企業や、複数部署にまたがるIT環境を運用している場合に有効であり、セキュリティ対応の属人化を防ぐ助けとなります。

このように、Nessusは単なる脆弱性スキャナーにとどまらず、ITセキュリティの運用効率化と高度化を支えるプラットフォームとしての可能性を持っています。

導入の注意点とベストプラクティス—継続的なセキュリティ運用を目指して

スキャン対象への影響と事前調整

Tenable Nessusを本格的に運用する際には、いくつかの注意点をあらかじめ理解しておくことが重要です。

まず第一に、スキャン対象とするネットワーク環境やデバイスに関する正確な把握が不可欠です。

Nessusは非常に詳細なスキャンを行うため、一部のデバイスやシステムに対しては過負荷を引き起こすリスクもあります。

たとえば、古いネットワーク機器やリソースに余裕のない組み込み型システムなどは、スキャンによってサービス停止に至る可能性もあるため、事前の調整や影響範囲の確認が求められます。

効果的なスキャン計画の策定

次に、スキャンの対象やスケジュールの設計にも工夫が必要です。

深夜や休日といった業務への影響が少ない時間帯にスキャンを実施する、定期スキャンとスポットスキャンを使い分けるなど、現場運用に適した運用フローを構築することが求められます。

これは情報システム部門と業務部門の信頼関係構築にもつながるため、社内調整を丁寧に行うことが重要です。

脆弱性対応フローの整備

さらに、脆弱性の検出後に対策を講じるフローの整備も欠かせません。

Nessusのスキャン結果を分析した後、実際にどのように対応するかは組織の体制によって異なりますが、CSIRTやSOCとの連携、あるいは各システム管理者との調整によって、修正対応をタイムリーに進める体制があることが理想です。

継続的な運用とKPI設定

セキュリティ対策は一過性のプロジェクトではなく、継続的な取り組みが不可欠です。

そのため、Nessusのスキャン結果をKPIとして定期的に振り返り、前回比で改善されているかどうかを確認する文化を組織に根付かせることが重要となります。

また、トレンド分析や傾向の把握を通じて、次なるリスクの予兆を察知し、先手を打つセキュリティ運用が可能となります。

最新情報のキャッチアップ

最後に、Nessusの機能やライセンス体系は随時アップデートされているため、公式ドキュメントやユーザーコミュニティを定期的に確認することも重要です。

バージョンアップに伴う新機能の活用や、既存機能の改善を見逃さずに取り入れることで、Nessusの運用価値を最大化することができます。

おわりに

本記事では、Tenable Nessusの概要から導入、基本操作、レポート活用、そしてAPI連携や自動化といった応用的な使い方まで、多角的に解説してきました。

Nessusは単に脆弱性を検出するツールではなく、その結果を基に組織的なセキュリティプロセスを構築し、リスクを管理・低減させていくための強力なパートナーです。

導入して終わりではなく、本記事で紹介したようなベストプラクティスを参考に、自社の環境に合わせた運用体制を構築し、PDCAサイクルを回していくことが、その価値を最大限に引き出す鍵となります。

サイバーセキュリティに終わりはありませんが、Nessusのような優れたツールを正しく理解し、継続的に活用することで、巧妙化する脅威に効果的に立ち向かうことが可能です。

本稿が、皆様の堅牢なセキュリティ体制構築の一助となれば幸いです。この機会にNessusの導入を前向きに検討してみるのはいかがでしょうか。

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