セキュリティエンジニア必見!FortiWiFiによる統合セキュリティ環境の構築と導入戦略

目次

はじめに

記事をご覧いただき、ありがとうございます。
AIセキュリティ合同会社の越川と申します。

私は10年以上にわたり、ウェブアプリケーション開発からサーバー構築まで幅広く経験し、現在はシステムの安定稼働、データ保護、サイバー脅威対策といった分野に注力しています。そのような経験から、現代のビジネス環境におけるデータの重要性と、それを保護する必要性を日々痛感しております。

そして、このデータ保護と脅威対策を統合的に実現する上で、今や欠かせない存在となっているのが、本稿のテーマである「FortiWiFi」です。

現代の企業ネットワーク環境において、セキュリティの強化とワイヤレス環境の整備は不可欠な要素となっています。特に、リモートワークやBYOD(Bring Your Own Device)の普及により、従来の境界型セキュリティモデルでは対応しきれない新たな脅威が増加しています。

私が数多くの企業システムに携わってきた中で痛感するのは、ネットワークセキュリティと無線LAN環境を個別に管理することの複雑さと非効率性です。

Fortinet社が提供するFortiWiFiは、これらの課題を一台で解決する次世代ファイアウォール機能と無線LANアクセスポイントを統合した革新的なソリューションとして、セキュリティエンジニアや情報システム部門の担当者から高い評価を得ています。

用語説明
  • 境界型セキュリティモデル
    企業や組織のネットワークを「内部」と「外部」に分け、外部からの脅威を防ぐことを目的としたセキュリティ対策の考え方です。
    ファイアウォールやVPNなどのセキュリティ機器を境界に設置し、内部への不正アクセスを遮断します。
    しかし、近年はクラウドサービスの普及やテレワークの増加により、このモデルの限界が指摘され、より強固なセキュリティ対策として「ゼロトラスト」が注目されています。

FortiWiFi とはなにか

統合セキュリティアプライアンスの概要

FortiWiFiは、Fortinet社の次世代ファイアウォール「FortiGate」に無線LANアクセスポイント機能を統合したセキュリティアプライアンスです。一台の筐体で有線・無線両方のネットワークアクセスを制御し、UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)機能を提供します。

従来、企業では独立したファイアウォール機器と無線アクセスポイントを別々に管理する必要がありました。FortiWiFiはこれらを統合することで、設定の一元化、運用管理の簡素化、そして導入コストの削減を実現しています。

技術的特徴とアーキテクチャ

FortiWiFiの技術的な特徴として、以下の要素が挙げられます。

  • セキュリティプロセッサー(SPU)による高速処理
    FortinetのカスタムASICであるセキュリティプロセッサーにより、暗号化・復号化処理をハードウェアレベルで高速化しています。これにより、SSL/TLSトラフィックの検査や暗号化VPN通信においても、スループットの劣化を最小限に抑えることが可能です。
     
  • FortiGuardセキュリティサービスとの連携
    リアルタイムで更新される脅威インテリジェンス情報により、新種のマルウェアやゼロデイ攻撃に対しても迅速な対応が可能です。機械学習とAIを活用した脅威検知機能により、従来のシグネチャベースの検知では発見困難な高度な攻撃も検出できます。

【イメージ図:FortiWiFiのアーキテクチャ】

用語説明
  • UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)
    複数のセキュリティ機能を1つの機器に統合し、ネットワーク全体の脅威管理を一元化する手法です。
    ファイアウォール、アンチウイルス、アンチスパム、Webフィルタリングなど、個別のセキュリティ製品を組み合わせる代わりに、UTMを導入することで、管理の効率化とセキュリティ強化を両立できます。
  • ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
    特定の用途に特化して設計された集積回路のことです。
    汎用的なICとは異なり、特定の機器やシステムに必要な機能のみを搭載しているため、高性能、省電力、高信頼性を実現できます。
    一方で、設計・製造にコストと時間がかかるという特徴もあります。
  • ゼロデイ攻撃
    ソフトウェアやシステムの脆弱性(セキュリティホール)が発見された直後に、開発元が修正プログラムをリリースする前に、攻撃者がその脆弱性を悪用して攻撃を行うことです。
    修正プログラムが提供されるまでの間、対策が難しく、被害が甚大になる可能性があります。

なぜ FortiWiFi が活用されるのか

複雑化するネットワーク環境への対応

現代の企業ネットワークは、クラウドサービスの活用、モバイルデバイスの増加、IoTデバイスの導入により、従来よりも複雑化しています。

昨今ではテレワークやクラウド利用の増加に伴って単なるセキュリティ製品として利用することにとどまらず、SD-WANやローカルブレイクアウト目的としての導入も増えている状況です。

このような環境では、個別のセキュリティ機器やネットワーク機器を個々に管理することは現実的ではありません。FortiWiFiは、統合管理による運用効率化と、一貫したセキュリティポリシーの適用を可能にします

セキュリティファブリックによる包括的防御

FortiWiFiは、Fortinetのセキュリティファブリックアーキテクチャの中核として機能します。これにより、ネットワーク上の各種セキュリティデバイスが連携し、脅威情報をリアルタイムで共有することで、より効果的な防御体制を構築できます。

例えば、エンドポイント保護製品で検知された脅威情報が即座にFortiWiFiに共有され、該当する通信を自動的にブロックするといった連携動作が可能です。

コストパフォーマンスと運用効率

一つの筐体で無線と有線LANの両方のアクセスを可能にするため、中小規模の企業、大企業の支店、そしてリテールの店舗など多くのシーンでご利用頂けます。機器統合による設置スペースの削減、電源・配線の簡素化、そして管理インタフェースの一元化により、総保有コスト(TCO)の大幅な削減が可能です。

特に、IT人員が限られている中小企業や地方拠点において、この統合アプローチは大きなメリットをもたらします。

用語説明
  • セキュリティファブリック
    複数のセキュリティ製品や機能を連携させ、ネットワーク全体を包括的に保護する仕組みのことです。
    Fortinet社が提供する「Fortinet Security Fabric」が代表的で、幅広い脅威に対応し、統合された管理と自動化によってセキュリティを強化します。
  • TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)
    「総所有コスト」と訳され、ある製品やシステムを導入してから廃棄するまでにかかる全ての費用を合計したものです。
    単なる購入費用(初期コスト)だけでなく、その後の運用、保守、管理、そして最終的な廃棄に至るまで、所有することで発生するすべてのコストを把握するための重要な考え方です。

FortiWiFi の具体的な導入ステップ

導入前の要件定義とアセスメント

FortiWiFiの導入を成功させるためには、詳細な要件定義とネットワークアセスメントが重要です。以下のポイントを事前に明確化する必要があります。

ネットワークトラフィック分析
現在のトラフィック量、ピーク時の負荷、将来の成長予測を定量的に把握します。これにより、適切なモデル選定とサイジングが可能になります。

例えば、同時接続デバイス数が100台以下の環境であればFortiWiFi-40F、500台以上の大規模環境ではFortiWiFi-80Fといった選択が必要です。

セキュリティポリシーの策定
アクセス制御ルール、トラフィック監視要件、ログ保存期間などのセキュリティポリシーを明文化します。特に、BYOD環境では、個人デバイスと企業ネットワークの分離方針を明確に定義することが重要です。

設計・構築フェーズ

物理的な設計
FortiWiFiの設置場所、電波カバレッジ、他のネットワーク機器との接続方式を設計します。無線LAN機能を最大限活用するため、電波干渉源の調査と最適な設置位置の検討が必要です。

論理的な設計
ネットワークセグメンテーション、VLAN設計、ファイアウォールポリシー、QoS(Quality of Service)設定などを詳細に設計します。特に、セキュリティゾーンの分離と適切な通信許可ルールの設定が重要です。

設定・テスト・本番移行

段階的設定アプローチ
初期設定では最小限の機能から開始し、段階的に機能を追加していきます。まずは基本的なファイアウォールルールと無線LAN設定を行い、動作確認後にUTM機能やアドバンスド機能を有効化します。

詳細な動作テスト
各種シナリオでの動作テストを実施します。
正常系テストに加え、異常系テスト(攻撃シミュレーション、負荷テスト等)も重要です。特に、フェイルオーバーやトラフィック急増時の動作確認は必須です。

運用・監視体制の構築

運用プロセスの標準化
日常的な監視項目、定期メンテナンス手順、インシデント対応フローを標準化します。FortiAnalyzerとの連携により、ログの一元管理と効率的な分析が可能になります。

セキュリティ運用(SOC)との連携
24時間365日の監視体制が必要な場合は、セキュリティオペレーションセンター(SOC)との連携体制を構築します。

用語説明
  • BYOD環境(Bring Your Own Device)
    従業員が業務に個人所有の端末(PC、スマートフォン、タブレットなど)を持ち込んで利用する環境のことです。
    従業員は使い慣れた端末で業務を行うことができ、企業は端末購入費用を削減できるなどのメリットがあります。
    しかし、セキュリティリスクや労務管理の難しさなどの課題も存在します。
  • QoS(Quality of Service)
    ネットワーク上で特定の通信を優先的に処理し、安定した通信品質を確保するための技術です。
    ネットワークの帯域を有効活用し、音声や動画などリアルタイム性の高いデータや、基幹システムなど重要なデータの通信をスムーズに行うために利用されます。
  • フェイルオーバー
    システムやサーバーに障害が発生した際に、自動的に待機系のシステムやサーバーに切り替える仕組みのことです。
    これにより、サービスの中断を最小限に抑え、業務を継続させることができます。
  • FortiAnalyzer
    Fortinet社が提供する、ネットワークセキュリティ機器のログを集中管理・分析するためのアプライアンス製品です。
    ログの収集、分析、レポート作成を一つのプラットフォームで行うことで、セキュリティインシデントの早期発見や原因究明を支援します。

FortiWiFi のメリット

統合管理による運用効率化

FortiWiFiの最大のメリットは、複数のネットワーク機能を単一の管理インターフェースで統合管理できることです。従来、ファイアウォール、無線アクセスポイント、スイッチングハブをそれぞれ異なるベンダーの製品で構成していた場合、各々の管理コンソールを個別に操作する必要がありました。

FortiWiFiでは、Web GUI、CLI(Command Line Interface)、REST APIなど、複数の管理方法を提供しており、管理者のスキルレベルや運用要件に応じて選択できます。

高度なセキュリティ機能の統合

FortiWiFiは、単なるファイアウォール機能に留まらず、以下のような高度なセキュリティ機能を統合しています。

AI・機械学習による脅威検知
FortinetのAI技術「FortiGuard AI」により、従来のシグネチャベース検知では発見困難な新種のマルウェアや標的型攻撃を検出します。

SSL/TLS インスペクション
暗号化された通信を複号化・検査し、暗号化通信を悪用した攻撃を検出します。
これは、現在のサイバー攻撃の多くが暗号化通信を悪用している状況において極めて重要な機能です。

他製品との比較

以下は、FortiWiFiと競合他社製品との機能比較表です。

機能項目 FortiWiFi Cisco Meraki SonicWall WatchGuard
統合UTM機能
無線LAN統合
AI脅威検知
セキュリティファブリック
コストパフォーマンス
管理の容易さ
SD-WAN機能

評価基準:◎優秀、○良好、△普通
※本比較は2025年7月時点の公開情報に基づく

スケーラビリティと将来拡張性

FortiWiFiは、企業の成長に合わせてスケールアウトが可能な設計となっています。
小規模環境から開始し、事業拡大に伴って上位モデルへの移行や、複数拠点での統合管理が容易に実現できます。

用語説明
  • REST API(REpresentational State Transfer API)
    Webサービス間で情報をやり取りするための規約の一つで、RESTという設計原則に基づいたAPIのことです。
    Webサービスをシンプルで効率的に利用するための考え方です。
  • QoS(Quality of Service)
    ネットワーク上で特定の通信を優先的に処理し、安定した通信品質を確保するための技術です。
    ネットワークの帯域を有効活用し、音声や動画などリアルタイム性の高いデータや、基幹システムなど重要なデータの通信をスムーズに行うために利用されます。
  • スケールアウト
    システムの処理能力を向上させるために、サーバーの台数を増やすことです。
    複数のサーバーに処理を分散させることで、システム全体の処理能力を高めることができます。
    また、一部のサーバーに障害が発生しても、他のサーバーで処理を継続できるため、可用性も向上します。

活用事例

大手デジタルマーケティング企業の統合セキュリティ基盤構築事例

導入前の課題
株式会社セプテーニ・ホールディングス様では、インターネット広告事業やマンガコンテンツ事業の拡大に伴い、以下の課題に直面していました。

動画をはじめとするリッチコンテンツのニーズが高まる中、ファイルサイズが大きく、トラフィックに対する負荷が増大していました。既存の1GbEネットワークインフラでは処理能力に限界があり、ネットワークの増強が急務となっていました。

さらに、モバイルやクラウドの利用拡大により増加する脅威に対して、多層防御の重要性がますます高まっていました。

導入内容
同社は社内LANを1GbEから10GbEに増強するとともに、10GbEネットワークに対応可能な高性能セキュリティ機器として「FortiGate-1000D」を採用しました。

アンチウイルス、侵入検知防御(IPS)、Webフィルタリングなど、さまざまなセキュリティ機能を1台に統合したUTMとして導入し、コストパフォーマンスを重視した選定が行われました。

日立ソリューションズが一次代理店として、設定内容のヒアリングから設計、構築作業まで包括的にサポートし、2016年7月の正式発注から3ヶ月という短期間での導入を実現しました。

導入後の効果
社内ネットワークを10GbEに切り替え、以前よりもさらに膨大な通信リクエストが発生している状況でも、ネットワーク遅延等の支障は発生せず、快適な利用環境を実現しています。

FortiAnalyzerによる各機器のログ一元管理により、運用負荷を軽減しつつ、効率的な統合管理を実現できています。また、直感的に扱える管理画面により、スムーズな運用が継続されており、セキュリティ強化と業務効率化を同時に達成しています。

製造業における拠点間セキュアネットワーク構築事例

導入前の課題
全国20拠点を展開する製造業企業では、各拠点で異なるベンダーのセキュリティ機器を個別管理していたため、セキュリティポリシーの統一が困難でした。

拠点ごとに異なる設定や運用手順により、全社的なセキュリティレベルの均一化ができず、管理工数の増大が課題となっていました。また、拠点間のセキュアな通信確保と、迅速なセキュリティアップデートの展開も困難な状況でした。

導入内容
各拠点にFortiWiFiを配置し、SD-WAN機能を活用した冗長化されたVPN接続を構築しました。本社に設置したFortiManagerを通じて全拠点のFortiWiFiを一元管理する体制を構築し、統一されたセキュリティポリシーの配信と管理を実現しました。

また、拠点間の通信品質向上のため、QoS設定による帯域制御と優先度制御も併せて実装しました。

導入後の効果

  • 本社からの一元管理により、全拠点のセキュリティポリシーの統一と、迅速なセキュリティアップデートの配信を実現しました。
     
  • 従来各拠点で個別に管理していたセキュリティ機器の運用工数を70%削減することができ、IT部門の業務効率が大幅に向上しています。
     
  • 統一されたセキュリティレベルにより、全社的なリスク管理体制も強化されました。

教育機関でのBYOD対応ネットワーク基盤構築

導入前の課題
ある私立大学では、学生・教職員約5,000名のBYOD環境への対応が急務となっていました。従来の有線LAN中心のネットワークでは、多様な個人デバイスの接続に対応できず、また学術ネットワークと個人デバイスの混在によるセキュリティリスクが懸念されていました。

さらに、ゲストアクセスの提供や、ネットワーク利用状況の可視化も課題となっていました。

導入内容
キャンパス全域にFortiWiFiベースの無線LANネットワークを構築しました。
マルチSSID機能により、学術ネットワーク、事務ネットワーク、学生BYOD、ゲストネットワークを論理的に分離し、それぞれに適切なセキュリティポリシーを適用しました。

VLAN分離機能により、一つの物理インフラ上で複数の論理的なネットワークを構築し、FortiAuthenticatorによる認証基盤も併せて導入しました。

導入後の効果
学術ネットワーク、事務ネットワーク、ゲストネットワークの完全な分離により、セキュリティとユーザビリティを両立させることができました。

約5,000名のユーザーが快適に無線LANを利用できる環境を提供しながら、適切なアクセス制御とトラフィック監視を実現しています。また、ネットワーク利用状況の可視化により、効率的な運用管理が可能となり、IT部門の負荷軽減にも貢献しています。

参考文献:

まとめ

FortiWiFiは、現代企業が直面するネットワークセキュリティとワイヤレス環境の複合的な課題を、統合的なアプローチで解決する革新的なソリューションです。

単なる機器統合に留まらず、AI・機械学習技術を活用した高度な脅威検知、セキュリティファブリックによる包括的防御、そして優れたコストパフォーマンスを実現しています。

特に、IT人員や予算に制約がある中小企業や地方拠点、そして迅速な展開が求められる企業環境において、FortiWiFiの統合アプローチは大きな価値をもたらします。適切な要件定義と段階的な導入アプローチにより、セキュリティレベルの向上と運用効率化を同時に実現することが可能です。

セキュリティエンジニアや情報システム部門の担当者にとって、FortiWiFiは今後のネットワークインフラ整備において重要な選択肢の一つとなることでしょう。

導入検討の際は、自組織の要件を詳細に分析し、適切なモデル選定と設計を行うことが成功の鍵となります。

参考文献

  1. 日立ソリューションズ – 無線LAN機能(FortiWiFi)の紹介:
    https://www.hitachi-solutions.co.jp/fortinet/function/wifi.html
     
  2. 株式会社日立ソリューションズ – Fortinetソリューション導入事例:
    https://www.hitachi-solutions.co.jp/fortinet/case01/
     
  3. NTTデータ – FortiGateの紹介:
    https://network.nttdata-luweave.com/fortinet/
     
  4. Fortinet – 導入事例:
    https://www.fortinet.com/jp/customers
     
  5. Networld – FortiGateシリーズ活用事例:
    https://www.networld.co.jp/product/fortinet/technical-guide/highpm.html
     
  6. マイナビニュース:
    https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240201-2874849/
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