【2025年版】CrowdStrike Falcon Complete完全ガイド – 次世代EDRマネージドサービスの導入から活用まで

目次

はじめに

記事をご覧いただき、ありがとうございます。
AIセキュリティ合同会社の越川と申します。

私は10年以上にわたり、ウェブアプリケーション開発からサーバー構築まで幅広く経験し、現在はシステムの安定稼動、データ保護、サイバー脅威対策といった分野に注力しています。そのような経験から、現代のビジネス環境におけるデータの重要性と、それを保護する必要性を日々痛感しております。

そして、このデータ保護と脅威対策を統合的に実現する上で、今や欠かせない存在となっているのが、本稿のテーマである「EDR(Endpoint Detection and Response)」です。

現代のサイバーセキュリティ環境において、従来のアンチウイルス製品だけでは高度化する攻撃手法に対応することが困難になってきています 。

特に、ゼロデイ攻撃やランサムウェア、標的型攻撃など、従来のシグネチャベースの検知では発見が困難な脅威が急増しています 。

このような背景から、エンドポイントでの異常な動作を検知し、迅速に対応するEDRの重要性が高まっています 。しかし、EDRツールを導入しても、適切な運用には高度な専門知識と24時間365日の監視体制が必要となり、多くの企業が運用面での課題を抱えています 。

CrowdStrike社が提供するFalcon Completeは、こうした課題を解決するマネージド型EDRサービスとして、多くの企業で導入が進んでいます 。

本記事では、セキュリティエンジニアや情報システム部門の担当者が製品導入を検討する際に必要な情報を、技術的な観点から詳しく解説します 。

ゼロデイ攻撃とは?

ソフトウェアやシステムの脆弱性が発見されてから、開発元が修正プログラムを公開する前に、その脆弱性を悪用して行われるサイバー攻撃のことです。

修正プログラムが提供される前の「0日目」に攻撃が行われるため、ゼロデイ攻撃と呼ばれます。

EDR(Endpoint Detection and Response)とは?

パソコンやサーバーなどのエンドポイントにおける脅威を検知・対応するセキュリティソリューションのことです。

従来のセキュリティ対策では防ぎきれないサイバー攻撃が増加する中、攻撃を検知・対応することで被害を最小限に抑えることを目的としています。

【イメージ図:技術の進化】

Falcon Completeとはなにか

製品概要と位置づけ

CrowdStrike Falconは、インテリジェントな軽量エージェントを備え、ポイント製品を統合して、マルウェアかマルウェアフリーかを問わず、高度な攻撃を阻止します。

その中でもFalcon Completeは、単なるソフトウェアツールではなく、CrowdStrike社のセキュリティエキスパートチームが24時間365日体制で監視・対応を行うマネージド型サービスです。

技術的特徴

Falcon Completeの核となるのは、Falcon Sensorと呼ばれる軽量エージェントです。
このエージェントは以下の特徴を持ちます。

  • クラウドネイティブアーキテクチャ
    軽量なエージェントであらゆる環境を保護するプラットフォームとして設計されており、オンプレミス環境でもクラウド環境でも統一的な保護を提供します。
  • オフライン対応
    端末側にも同様の機能を持ち、オフライン時も問題なく検知 テレメトリデータはネットワーク接続時にクラウドへ送信されるため、ネットワーク接続が不安定な環境でも継続的な保護が可能です。
  • AI/機械学習による脅威検知
    シグネチャベースの検知に依存せず、行動分析とAIを組み合わせた検知手法により、未知の脅威にも対応可能です。

サービス構成要素

CrowdStrike社が提供するMDRサービス「Falcon Complete」は、24/365体制のMDRサービスです。
管理、防止、モニタリング、レスポンスのプロセス全体をFalcon Completeチームがお客様に代わり実施します。

具体的には以下のサービスが含まれます。

  • 継続的監視:SOC(Security Operations Center)による24時間365日の監視
  • 脅威検知・分析:専門アナリストによる高度な脅威分析
  • インシデント対応:発見された脅威に対する即座の封じ込め・除去
  • レポーティング:インシデントの詳細分析と改善提案
セキュリティオペレーションセンターとは?

SOC(Security Operation Center)は、組織のセキュリティを24時間365日体制で監視・管理し、サイバー攻撃やインシデントの検知、分析、対応を行う専門組織のことです。

SOCは、組織の情報システムやネットワークを監視し、脅威を早期に発見・分析することで、被害を最小限に抑える役割を担います。

【イメージ図:Falcon Complete システム構成図】

なぜFalcon Completeが活用されるのか

従来のセキュリティ対策の限界

従来のアンチウイルス製品は、既知のマルウェアのシグネチャ(特徴)をデータベースに保存し、それと一致するファイルを検知する方式でした。

しかし、現在の攻撃者は以下のような手法を用いて、この検知方式を回避しています。

  • ファイルレス攻撃:マルウェアファイルをディスクに保存せず、メモリ上でのみ動作する攻撃
  • Living off the Land攻撃:正規のシステムツール(PowerShell、WMIなど)を悪用した攻撃
  • 多段階攻撃:複数の段階に分けて攻撃を実行し、各段階では正常に見える操作を行う攻撃

EDRの必要性と運用課題

これらの高度な攻撃に対応するため、多くの企業がEDR製品の導入を検討しています。
しかし、EDRツールを効果的に運用するには以下の課題があります。

  1. 専門知識の不足:アラート分析や脅威の判定には高度なセキュリティ知識が必要
  2. 人的リソースの不足:24時間365日の監視体制を維持するには大量の人員が必要
  3. アラート疲れ:大量の偽陽性アラートにより、真の脅威を見逃すリスク

Falcon Completeが解決する課題

2024年も大手企業導入ラッシュが続いているFalcon Completeは、これらの課題を以下のように解決します。

  • 専門知識の補完
    CrowdStrikeの脅威インテリジェンスチームが蓄積した知見を活用し、高度な脅威分析を提供します。
  • 運用負荷の軽減
    従来のEDRでは企業側が行う必要があった監視・分析・対応を、すべて専門チームが代行します。
  • 迅速な対応
    インシデント発生から初動対応まで、平均1分以内という業界最速レベルの対応時間を実現しています。

従来のセキュリティ対策との比較フロー

【イメージ図】

Falcon Completeの具体的なステップ(導入手順)

事前準備フェーズ

導入前に以下の点を確認・準備する必要があります。

  1. システム要件の確認:対応オペレーティング システム(64ビット)の確認 必要なネットワーク要件(クラウドとの通信要件)の確認 既存セキュリティ製品との競合確認
     
  2. 既存環境の評価:既存のソリューションをアンインストールする必要があります 既存のセキュリティポリシーとの整合性確認 バックアップ・復旧計画の策定

導入実装フェーズ

Step 1: アカウントセットアップ

CrowdStrike Falcon Consoleへのアクセス設定を行います。
ここでCID(Customer ID)の取得を行います。

Step 2: Falcon Sensorの展開

文字literal数分で、単一の軽量センサーをエンドポイントに展開し、Webコンソールから管理可能な状態にします。

具体的な展開方法

  • 手動インストール:個別端末への直接インストール
  • グループポリシー経由:Active Directory環境での一括展開
  • SCCM/Intune経由:エンタープライズ管理ツールを使用した展開

Step 3: 初期設定と調整

  • エンドポイントの可視化設定
  • アラート閾値の調整
  • 除外設定の適用(必要に応じて)

Step 4: 監視開始

CrowdStrikeのSOCチームによる監視を開始します。
この段階で、お客様固有の環境に合わせた監視ルールのチューニングを行います。

CID(Customer ID)とは?

顧客を特定し、サービスを円滑に利用するために重要な情報です。
また、エンドポイントとCrowdStrike Falcon Consoleの関連付けに使用されます。組織固有の識別子として機能し、テレメトリデータの送信先を決定します。

運用開始フェーズ

導入完了後、以下の項目で運用を開始します。

  1. ベースライン確立:正常な動作パターンの学習(通常2-4週間)
  2. カスタマイズ:お客様の環境に特化した検知ルールの適用
  3. 定期レビュー:月次での脅威状況レポートと改善提案の提供

Falcon Completeのメリット

主要なメリット

1. 運用負荷の大幅軽減

従来のEDRでは、アラート分析に1日あたり数時間を要していましたが、Falcon Completeでは専門チームが全て代行するため、社内リソースを戦略的業務に集中できます。

2. 高度な脅威検知能力

AIと機械学習、さらにCrowdStrikeが持つ豊富な脅威インテリジェンスを活用し、従来の検知手法では発見困難な脅威も検知可能です。

3. 迅速なインシデント対応

インシデント発生から封じ込めまでの時間を大幅に短縮し、被害拡大を防止します。

4. 総合的なセキュリティ向上

CrowdStrike Falconでは、詳細なログをもとに、操作・挙動をフローで確認できる画面などを提供。「ログが不足し、原因がわからない」ことがなく、いつ・どこで・何が起きたかを迅速に究明できます。

他製品との比較

比較項目 Falcon Complete 従来EDR製品 従来AV製品
監視体制 24/365 SOC監視 社内監視が必要 基本的に監視なし
脅威検知手法 AI/ML + 行動分析 行動分析中心 シグネチャベース
インシデント対応 専門チームが代行 社内対応が必要 基本的に対応なし
運用負荷 非常に軽微 高い 軽微
初期投資 高い 中程度 低い
高度な脅威への対応 優秀 運用次第 限定的

この比較表からも分かるように、Falcon Completeは初期投資は高いものの、運用負荷の軽減と高度な脅威対応能力により、総合的なコストパフォーマンスに優れています。

インシデント対応フロー比較

【イメージ図】

活用事例と活用方法の参考例

株式会社グラファーの導入事例

CrowdStrike Falconには様々なコンポーネントが用意されているが、今回同社では次世代アンチウイルス「Falcon Prevent」、EDR「Falcon Insight XDR」、脅威ハンティング「Falcon OverWatch」、IT資産管理「Falcon Discover」などを導入しています。

同社では、デジタル変革を推進する中で、従来のセキュリティ対策では対応困難な新しい脅威に直面していました。Falcon Completeの導入により、以下の成果を得ています。

  • インシデント対応時間の短縮:従来は数時間要していた初動対応が、数分で完了
  • 運用負荷の軽減:セキュリティ監視業務から解放され、戦略的IT業務に集中
  • 可視性の向上:全社的なセキュリティ状況の一元管理が可能に

製造業での活用方法

製造業では、OT(Operational Technology)とIT環境の融合が進む中で、新たなセキュリティリスクが発生しています。Falcon Completeは以下のような活用方法が考えられます。

  • 製造ラインの保護:生産システムへの不正アクセスの検知・防止
  • 知的財産の保護:設計図面や技術資料の不正持ち出し防止
  • サプライチェーンセキュリティ:取引先との連携部分でのセキュリティ強化
Operational Technologyとは?

工場やプラント、社会インフラなどで、機器やシステムを監視・制御するための技術の総称です。
具体的には、センサー、制御システム、産業機械などが含まれます。IT(Information Technology)が情報処理を目的とするのに対し、OTは物理的なプロセスや機器の運用を目的とします。

金融業での活用方法

金融業界では、厳格なコンプライアンス要件と高度なセキュリティ要求に対応する必要があります。

  • 不正取引の検知:異常な取引パターンの検知と即座の対応
  • 内部不正の防止:従業員による不正アクセスの検知
  • 規制対応:各種規制要件に対応したログ管理と監査証跡の提供

参考文献

まとめ

Falcon Completeは、従来のセキュリティ対策の課題を解決する包括的なマネージドセキュリティサービスです。特に、以下の企業での導入効果が高いと考えられます。

導入を強く推奨する企業

  • セキュリティ専門人材が不足している組織
  • 24時間365日の監視体制を構築できない組織
  • 高度な脅威に対する防御が必要な組織
  • DXを推進しており、セキュリティとビジネススピードを両立させたい組織

導入時の重要ポイント

  1. 既存セキュリティ製品との整合性確認
  2. 社内運用体制との連携設計
  3. 長期的なROI評価による投資判断
  4. 段階的な導入による運用成熟度の向上

現在のサイバーセキュリティ脅威の高度化を考えると、Falcon Completeのようなマネージド型セキュリティサービスは、単なる選択肢ではなく必須のインフラとして位置づけられるでしょう。

セキュリティエンジニアとしては、技術的な検証と併せて、組織全体のセキュリティ戦略の中でのFalcon Completeの位置づけを明確にすることが重要です。

参考文献

  1. CrowdStrike Falcon®プラットフォーム:
    https://www.crowdstrike.jp/falcon-platform/
     
  2. CrowdStrike – 導入事例 株式会社グラファー:
    https://www.networld.co.jp/casestudy/2024-crowdstrike-graffer.html
     
  3. exabeam – CrowdStrike Falconの紹介:
    https://www.exabeam.com/ja/explainers/crowdstrike/crowdstrike-falcon-components-pros-cons-and-top-5-alternatives/
      
  4. SB C&S -【CrowdStrike】Falconの魅力:
    https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20241112_crowdstrikefalcon_1.html
     
  5. マクニカ – CrowdStrikeが提供する各モジュールFalcon:
    https://www.macnica.co.jp/business/security/manufacturers/crowdstrike/falconhost.html
     
  6. CrowdStrike – クラウドストライクの展開に関するFAQ:
    https://www.crowdstrike.com/ja-jp/products/faq/
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次