【2025年版】Mimecast完全解説!Microsoft 365だけでは防げない巧妙なメール脅威への最終回答

目次

はじめに

記事をご覧いただき、ありがとうございます。
AIセキュリティ合同会社の越川と申します。

私は10年以上にわたり、ウェブアプリケーション開発からサーバー構築まで幅広く経験し、現在はシステムの安定稼働、データ保護、サイバー脅威対策といった分野に注力しています。そのような経験から、現代のビジネス環境におけるデータの重要性と、それを保護する必要性を日々痛感しております。

そして、このデータ保護と脅威対策を統合的に実現する上で、今や欠かせない存在となっているのが、本稿のテーマである「Mimecast」です。

ビジネスメール詐欺(BEC)や標的型ランサムウェア攻撃など、企業活動の根幹であるメールを悪用したサイバー攻撃は年々巧妙化・高度化しています。

Microsoft 365やGoogle Workspaceに標準搭載されているセキュリティ機能だけでは、これらの進化する脅威を完全に防ぎきることは困難になりつつあるのが実情です。

本記事では、こうした課題に対する強力なソリューションとして注目されるMimecastについて、その全貌を技術的な視点から紐解きます。

セキュリティエンジニアや情報システム部門のご担当者が、自社のセキュリティ体制を次のレベルへ引き上げるための具体的な検討材料となることを目指します。

Mimecastとはなにか

Mimecastは、単なる迷惑メールフィルターではありません。
メールセキュリティ、Eメールアーカイブ、そして事業継続性(BCP)の3つの主要機能を、単一のクラウドプラットフォームで提供するSaaS型サービスです。

具体的には、以下のような多岐にわたる機能群を統合しています。

  • メールセキュリティ
    スパム・ウイルス対策、標的型攻撃対策(サンドボックス、URL保護)、なりすまし対策(DMARC分析)、情報漏洩対策(DLP)などです。
     
  • アーカイブ
    全ての送受信メールを改ざん不可能な状態で長期保管し、高速な検索を可能にする。コンプライアンスや訴訟対策(eDiscovery)に貢献します。
     
  • 事業継続性
    メインのメールサーバー(Microsoft 365など)がダウンした場合でも、Mimecast経由でメールの送受信を継続できる仕組みを提供します。

なぜMimecastが活用されるのか

Microsoft 365にもDefender for Office 365 (MDO) という優れたセキュリティ機能がありますが、それでもMimecastが選ばれるのには明確な理由があります。
それは「多層防御」の実現です。

攻撃者は、特定のセキュリティ製品の検知を回避する手法を常に研究しています。そのため、単一のベンダーの防御壁に頼るのではなく、複数の異なる検知エンジンを持つセキュリティ層を重ねることで、防御の網をより強固なものにできます。

Mimecastは、Microsoftとは異なる独自の脅威インテリジェンスと検知エンジンを持っているため、MDOをすり抜けてしまう未知の脅威やゼロデイ攻撃を捕捉できる可能性が高まります。この「+α」の防御層が、企業の最後の砦として機能するのです。

Mimecastの具体的なステップ

Mimecastの導入は、クラウドサービスならではのシンプルさが特徴です。
オンプレミス環境のように物理的なサーバーを構築・管理する必要はありません。

導入の主要ステップ

導入の核となるのは「MXレコードの書き換え」です。

注釈:MXレコードとは
メール交換(Mail Exchange)レコードの略です。ドメイン宛のメールをどのメールサーバーに配送すればよいかを定義する、DNS(Domain Name System)に登録される情報の一つです。

以下の図のように、自社ドメインのMXレコードの参照先をMimecastに向けることで、全てのインバウンド・アウトバウンドメールがMimecastのゲートウェイを経由するようになります。

ここでセキュリティスキャンやアーカイブが行われ、安全と判断されたメールのみがMicrosoft 365などのプライマリメールサーバーへ配送されます。

【イメージ図】

導入後の運用

導入後は、直感的なWebベースの管理コンソールから、以下のような設定や監視を一元的に行います。

  • ポリシー設定
    スパム感度の調整、特定のファイル形式のブロック、URLの書き換え対象の指定など、組織のセキュリティポリシーに合わせて柔軟な設定が可能です。
     
  • 脅威分析
    どのような攻撃が検知・ブロックされたかをダッシュボードで視覚的に確認できます。
     
  • レポート
    定期的なセキュリティレポートを自動生成し、経営層への報告資料としても活用できます。

Mimecastのメリット

Mimecastを導入するメリットは多岐にわたりますが、特に重要な点を他社製品と比較しながら解説します。

高度な脅威検知と防御能力

Mimecastの最大の強みは、Targeted Threat Protection (TTP) と呼ばれる一連の標的型攻撃対策機能です。

  • URL保護
    メールの本文や添付ファイル内のURLをMimecast独自の安全なリンクに書き換えます。
    ユーザーがクリックしたタイミングでリンク先の安全性をリアルタイムで評価し、危険なサイトへのアクセスをブロックします。
     
  • 添付ファイルサンドボックス
    実行ファイルやマクロ付きOfficeファイルなど、不審な添付ファイルを仮想環境(サンドボックス)で実際に開いて挙動を分析します。マルウェアと判断された場合、そのファイルはユーザーに届く前に隔離されます。
     
  • なりすまし偽装対策
    ヘッダー情報や送信元IPだけでなく、メール本文の内容や過去のコミュニケーションパターンをAIが分析し、巧妙なビジネスメール詐欺(BEC)の疑いがあるメールに警告を表示します。

他製品との比較

ここでは、代表的なメールセキュリティソリューションであるMimecast、Proofpoint、そしてMicrosoft Defender for Office 365 (MDO) P2を比較します。

機能/観点 Mimecast Proofpoint Microsoft Defender for Office 365 (P2)
主な強み セキュリティ・アーカイブ・BCPの統合プラットフォーム 非常に高精度な脅威検知能力と脅威インテリジェンス Microsoft 365とのネイティブな統合性
サンドボックス 〇 (静的・動的解析) 〇 (高度な静的・動的解析) 〇 (Safe Attachments)
URL書き換え 〇 (クリック時スキャン) 〇 (クリック時スキャン) 〇 (Safe Links)
アーカイブ機能 ◎ (標準で強力な機能を提供) 〇 (オプションで提供) △ (Exchange Online Archivingが基本)
事業継続性(BCP) ◎ (メールサーバ障害時も送受信可) 〇 (オプションで提供) × (M365自体の障害には対応不可)
統合管理 単一コンソールで完結 複数コンソールになる場合あり Microsoft 365 Defenderポータルに統合

活用方法

Mimecastは、具体的なビジネスシーンでどのように役立つのでしょうか。
ここでは、代表的な3つの活用方法をシナリオ形式でご紹介します。

シナリオ1:標的型攻撃・BEC(ビジネスメール詐欺)対策

経理担当者のもとに、CEOの名前で「至急、A社の口座に100万円を振り込んでほしい」というメールが届きます。

Mimecastは、このメールが社外から送信されていること、過去のやり取りのパターンと異なることなどをAIが分析し、「なりすましの疑いがあります」という警告バナーをメールに自動で付与します。

これにより、担当者は詐欺に気づき、不正送金を未然に防ぐことができます。

シナリオ2:ランサムウェア対策

取引先を装ったメールに、パスワード付きZIPファイル形式の見積書が添付されています。
ユーザーがファイルを開こうとすると、Mimecastのサンドボックス機能がこのファイルを仮想環境で安全に展開・分析します。

ファイル内のマクロがOSの重要な設定を変更しようとする悪意のある挙動を検知したため、Mimecastはこの添付ファイルをブロックし、ユーザーには安全な通知のみを届けます。

シナリオ3:事業継続(BCP)対策

ある朝、Microsoft 365に大規模な障害が発生し、全社でOutlookが利用できなくなりました。しかし、Mimecastを導入していれば、ユーザーはWebブラウザや専用アプリからMimecastの継続性ポータルにアクセスすることで、通常通りメールの送受信を継続できます。

これにより、重要な顧客とのコミュニケーションやビジネスプロセスを止めることなく、障害からの復旧を待つことが可能です。

参考文献:Mimecast Case Studies

まとめ

本記事では、統合型メールセキュリティ「Mimecast」について、その機能から導入メリット、活用事例までを解説しました。

進化し続けるサイバー攻撃に対抗するためには、Microsoft 365のような優れたプラットフォームの標準機能だけに依存するのではなく、Mimecastのような専門的なソリューションを組み合わせた「多層防御」のアプローチが不可欠です。

Mimecastは、単に脅威からメール環境を守るだけでなく、アーカイブによるコンプライアンス強化、そして事業継続性の確保までをワンストップで実現します。セキュリティ強化と業務継続性の両立を目指す全ての企業にとって、Mimecastは非常に有力な選択肢となるでしょう。

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